【解決事例】交流のなかった父の死去に直面したケース
ご相談者様の状況
今回ご相談に来られたのは、30代の女性の方です。
ご主人とお子様とともに生活しており、穏やかな家庭を築かれていました。
ある日、突然見知らぬ司法書士から一通の手紙が届きました。
内容は「あなたのお父様が亡くなられ、相続するか放棄するかの意思表示をしてください」というものでした。
彼女のご両親は彼女が幼い頃に離婚しており、以降は母親に育てられました。そのため、父親とは顔を合わせた記憶がなく、実感としては“他人に近い存在”だったそうです。
手紙を送ってきた司法書士によると、依頼主は父親の兄弟であり、父の面倒を見ていたとのこと。
司法書士が相続人調査を行い、その結果として彼女に連絡が届いたという流れでした。
驚きと戸惑いを抱えた彼女は、相続財産の内訳を確認したいと申し出ましたが、「プラスの財産もマイナスの財産も正確には分からない」と言われてしまいました。そう言われてしまっては判断のしようがありません。
「財産が多いなら相続したいが、逆に借金が多ければ放棄したい」。ごく当然の気持ちです。
一方で、今まで父親の生活を支えてきた兄弟がいたことに対して、「自分が相続することで、迷惑に思われるのではないか」という心理的な葛藤もお持ちでした。
さらに、連絡をしてきた遠方の司法書士には対応に不親切な点が見られ、「この人には任せて良いものか」と不安も感じられていました。
そうした中、インターネットで弊所を見つけていただき、ご相談に来られたのです。
司法書士からのご提案&お手伝い
当初のご希望は、相続するか放棄するかの判断材料が欲しいというものでした。そこでかなでの相続では、以下の調査を提案しました。
●信用情報機関(CIC・JICC等)への情報開示による借入状況の把握
●銀行口座の預金調査
●不動産の所有状況調査
これらの調査により、相続財産の実態を把握し、相続すべきか否かを冷静に判断することが目的でした。
調査の結果、父親名義の不動産が複数存在することが分かりました。また、銀行口座にはある程度まとまった預金がありました。負債として確認されたのはごくわずかで、全体としては明らかにプラスの財産が上回っていました。
この調査結果を受け、彼女は「相続する」ことを選択しました。
相続手続きを行うメリット
まず、相続財産が明らかになったことで、安心して手続きを進めることができました。
当初連絡があった遠方の司法書士には調査結果と今後は弊所で進める旨を伝え、これまでの作業分の費用を清算していただきました。
次に、ご相談者が懸念されていた「父親の面倒を見ていた兄弟に対して申し訳ない気持ちがある」という点についても、弊所から特別寄与料の制度をご案内しました。
特別寄与料とは、相続人以外の親族が被相続人の介護や看護をしていた場合に、その貢献に応じて金銭を支払うことができる制度です。この制度を活用することで、ご相談者も心理的な負担を和らげることができました。
さらに、不動産については売却のご希望がありましたが、ご相談者は不動産所在地からは離れた場所にお住まいで、不動産会社の選定に悩まれていました。
そこで弊所の取引先である複数の不動産会社に査定を依頼し、その中でもっとも高額かつ信頼できる業者をご紹介し、ご相談者に手間がかからないよう売却先業者が残置物撤去も行い、売却までスムーズに進めることができました。
全体の相続手続きの流れ
1.戸籍の収集と法定相続情報一覧図の作成
2.信用情報の開示
3.預金と不動産の調査
4.前任司法書士との連絡と費用の清算
5.父親の兄弟への特別寄与料の提案
6.相続登記・預金解約の代行
7.不動産の査定・売却先の紹介
相続人はご相談者おひとりでしたので、手続きも比較的シンプルに進めることができました。
まとめ
今回の事例は、交流のなかった父親の死去という突然の出来事に直面し、不安を抱えながらも冷静に判断を進めた事例でした。
はじめは相続するかどうかも迷われていたご相談者でしたが、財産調査により全体像が見えたことで納得のいく決断ができ、結果としてプラスの資産をきちんと相続し、ご家族の生活に役立てることができました。
また、心理的な葛藤に対しても寄り添い、法的な制度を活用しながらご相談者の気持ちに沿った形で手続きを整えることができたのも、大きな成果だったと思います。
相続は、財産の有無だけでなく、気持ちの整理や人間関係の調整も伴う繊細な手続きです。
もし同じようなことでお悩みの方がいらっしゃいましたら、どうぞ一人で抱え込まず、お気軽にご相談ください。かなでの相続(運営:司法書士法人奏)では、財産調査から相続登記、売却支援まで一貫してサポートいたします。
